Secual 三上貴由
1.カーボンニュートラルの意識は変わっているか
国内でカーボンニュートラルや、GXという言葉がとくに注目を浴びだしたのは2020年の10月からであることは、共通認識があると思う。当時の首相が国会という場で宣言されたことからセンセーショナルで記憶にも新しい。
ただ、その言葉を思い浮かべたときに、具体的に何をするのか何をしていくのかを答えられる企業は少なく、約7割の企業が経営に影響があると理解しているものの、約8割の企業が方策検討を実施していない意識調査の結果がある。(*1)
実際のところ、意識が変わり、自分ごととして捉えているのは有価証券報告書へのサステナビリティ情報の開示を求められる大手企業のみではないかと思う。
2.コロナ禍中に起きたエネルギー価格の高騰
コロナ禍の真っ最中に起きた世界的なエネルギー価格の高騰は、光熱費の高騰という形で知れ渡ることになる。
エネルギー需要の逼迫は複合的な要因であるとされているが、ウクライナ侵攻という強い印象により、薄まっている印象であるものの世界的な天候不順や災害も発生しており、地政学的緊張等も含め、一過性のものにとどまらない可能性が出てきた。
今後、エネルギー需要が逼迫する世界の中で、企業としてどのように立ち回り、経済活動を進めていけばよいのか判断が難しい時代に突入する。
3.企業価値の変質
企業に対する見方も変化が見られる。これまで財務的要素を中心に見られていた企業の価値評価であるが、昨今では、「環境・社会・管理体制」の頭文字からESGと呼ばれる非財務的な要素が注目されている。
「ESG」は2006年に国連責任投資原則(PRI)でコフィー・アナンが提唱し、機関投資家採用から変遷を経て、企業価値と結びつけられるようになった考え方であるが、現在では経済活動とESGの両立が求められる見方が急速に広まっている。(*2)
ESGを評価する評価機関も多く存在しており、各社、ESG評価機関で評価を獲得したことを報告し、自社のESGの取組みに対しての正当性を主張している。
ただ、企業側からは評価基準が分かりにくく、情報開示に工夫するなど試行錯誤しているのが現状のようだ。
4.今後、企業活動に求められること
冒頭にも記述したとおり、カーボンニュートラルの影響への方策については、多くの企業でさまざまな制約があり、検討に至っていない。制約には企業ごとにさまざまであるが、それらを一つずつ噛み砕き、取り組みを検討する必要があると思う。
知識面・人材面の制約では、まずは情報の収集元を確保することで知識を身につける必要があるだろうし、初期コストの捻出においては正しく対費用効果を認識する必要があるだろう。それには自社事業の影響度の把握が必要だ。
どう取り組んでいくのかについては、優先順位を決定し、対応におけるロードマップを引かなければ始まらない。何せどの企業もまだ完全な正解パターンが出ているわけではない。自立的に考えて進めていくことが、現在の企業に求められていることではないだろうか。
出典・参照:
(*1)https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/SME/network/02.pdf